優しさってなんだろう
…というわけで、大いに期待して読んだ芥川の「秋」でしたが…
ひとことで言えば、古風な恋愛小説。現代人に訴えかけてくる力は弱いんじゃないかな。
でも、南木佳士が「最高」という理由はわかるような気がします。僕が読んだ新潮文庫の「解説」で中村真一郎がこの「秋」に触れて
>人間性そのもの、あるいは世界の在り方そのものの持つ、本来的な不条理さを見抜いており、それを大事に慎重にすくいとって、作品の中にそっと生けどりにしている(下線部は原文では傍点)
と書いているのは、南木佳士の小説にもそのまま当てはまるように思うのです。
今、鞄に入れて通勤の電車で読んでいる本は、南木佳士『医者という仕事』(朝日文庫)。最初の数編を読んだだけでもやたらと目につくのが「優しさ」という言葉。
>三十代半ばから四十歳代の働き盛りの医者仲間たちと雑談し、話題が大学受験の頃のことに及ぶと必ず出てくる結論がある。
今、おれたちがやっている仕事の内容から考えて、あれほど難しい入学試験は必要なかった。そして、入試のときに最も問われるべき資質は、学力ではなく優しさであった、と。
人間の優しさってなんだろう。本当の優しさは、人間の「本来的な不条理さ」を見抜いた者のみが持てるのではないだろうか。いや、それとも…
夜になっても熱帯のような暑さの続く道を、自問しながら家に向かったのでした。
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コメント
「人間の『本来的な不条理さ』を見抜」くってどういうことなんでしょう? 「本当の優しさ」って難しいですね。それはきっと、まわりの誰かが判断してくれるものなのでしょうね。自分では決してわからない……。わたしの「優しさ」のお手本は良寛ですけれど。
投稿 tomtom | 2005.06.29 01:34
「不条理」にしても「優しさ」にしても、辞書的に定義しようとするとどうしても捉えきれない部分が残る。それを掬い取るのが文学、すなわち小説であり、詩なのではないでしょうか。
良寛の「優しさ」というのはその生き方と作品のどちらに見出せるのですか、それともその両方に表れているのでしょうか?
投稿 mf | 2005.06.29 22:17
久々に開けてみました。私も南木佳士は大好きな作家です。「ふいに吹く風」はとても印象深いエッセイ集ですね。深沢七郎のところが好きです。「楢山節考」もいいし。彼の勤めている佐久総合病院の院長に若月俊一という人がいるのですが、この人が住井すゑと「いのちを耕す」という対談集を出しています。不思議な人のつながりですね。それをまたたまたま私が読んでびっくりしている!不条理とやさしさ・・この人たちとつながっていませんか?
投稿 yossi | 2005.07.07 22:34
南木佳士の魅力というのは、信州という風土の持つ魅力ともつながるのかなと思っています。
不思議な魅力を湛えた小説として真っ先に頭に浮かぶのが、深沢七郎の『楢山節考』と森敦の『月山』で、どちらもいつか読み直してみたいと思っています。
それにしても、こんな話をゆっくりしてみたいのに、余裕ないですね。
投稿 mf | 2005.07.09 21:15