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2005.10.05

『源氏物語』の主人公は?

 『源氏物語』の主人公はと訊かれたら、誰でも「光源氏」と答えるでしょう。
 でも、『紫式部のメッセージ』(朝日選書)の著者、駒尺喜美は断言します。

『源氏物語』の主人公は「女たち」である。

 光源氏は「どのように幸せに見える女も、内面は不幸だということを展開するための仕掛けの役割をになっている人物にすぎない」と、著者は言います。女たちを主人公に据えることによって、従来『源氏物語』の中で異質なものと受け取られてきた「宇治十帖」が書かれた必然性も理解できるのだと。そして、「宇治十帖」も含めた『源氏物語』全体に込められた紫式部の読者へのメッセージとは…

どのように善意の男、いい男と結ばれても女は不幸だ、ということを紫式部は書いたのである。これはもう、現代の認識でいえば、構造不幸、構造差別である。男性中心の社会構造の中では、人間関係、男女関係も男性中心、男性優位になってしまうのだ。
 紫式部は「構造差別」と考えていなかったとしても、〈結婚〉というものを、女の側から広く深く観察し、考えつめていって、内容的にはそこに到達したのである。男の世界と女の世界がいかにくいちがっているかということは、この社会がいかに男女分断の世界をつくり上げているか、そういう構造に組み上がっているか、ということなのである。

 著者は、光源氏の、薫の、匂宮の女性との交渉の場面における言動を具体的に取り上げつつ、いかに事が男性の都合のいいように運ばれていくか、また社会がそれを許す構造になっているかを明らかにしていきます。そして、そうした男性社会の本質を冷静に見つめた紫式部の、女性に向けてのメッセージを読み取ろうとするのです。
 面白い本です。『源氏物語』をちゃんと読んでみようという気になります。
 …でも、男性である自分が叱られているような気分になることも、確かです。

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