雪の日の奇跡
日本に来て3年になる高校生二人と日本語の勉強をするために、辻仁成の『ミラクル』を教材に選びました。新潮文庫の挿絵を見せながら最初の方のあらすじを話して聞かせると、二人ははやくも作品に引き込まれたようで、「読んでみたい?」と聞くと大きく頷きました。
>その店の名前はもう覚えてはいないが、カウンター脇のホールに古ぼけた小型のアップライトピアノが備付けてある小さなピアノバーだった。そしてあの男はそのピアノに真っ直ぐに向かいクラシックともジャズとも言えない不思議な旋律を奏でていた。
その男の名前はアル。アルは客である「僕」に、まだ誰にも話したことはないという自分の過去を語り始める。「それは僕のその後の人生を大きく左右するほどの物語だった。」
授業は二人の生徒に交互に音読してもらい、難しい言葉が出てきたらそのつど意味を説明するというやり方で先へ進みました。アルだけにしか見えない二人の幽霊の存在、不思議な女の子キキとの出会い、そして雪とともに訪れる奇跡… 作品はしっかり二人の高校生の心を捉えたようでした。3回目の授業で最後の場面を読み終えたとき、一人が「これで終わり?」と言ったのは、謎を残したような幕切れに、先があるならぜひ読みたいという気持ちにさせられたのでしょう。
次の授業では、アルとその父親のシドの会話の部分を、二人がそれぞれのせりふを担当して寸劇のような形で読んでみたら面白いのではないかと思っています。
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